谷山浩子コンサートレポート 2012年9月20日(木) Cプログラム「トモトモとオールリクエスト~劇場版~」 文/長井英治

わたしが谷山浩子さんのコンサートを最初に観たのは1990年代初頭の青山円形劇場で行われた「101人コンサート」という名前の付いたコンサートでした。このコンサートは1987年から2001年まで続いたシリーズで、その後2002年に「猫森集会」と名前を改めて現在の新宿 全労済ホール/スペース・ゼロで開催されています。

その、最初に観た「101人コンサート」が「オールリクエスト」で、それまで全曲がリクエストで構成されているコンサートなど観たことも、聞いたこともなかったわたしはかなり面食らってしまいました。まるで後ろから硬いもので殴られたような衝撃といいますか……。しかしながら、その素晴らしさにすっかりハマってしまい、翌年から毎回オールリクエストを観にいくようになります。お客さんが重箱の隅を突くような絶妙なリクエストを持ってきても、その変化球にその場で対応してしまう谷山さんのプロ根性を見ることができ、さらには谷山さんとお客さんの間に流れる温かい関係性を垣間見ることができる、ファンにはたまらないコンサートです。

今回で11回目を迎える猫森集会。今年もやはり「オールリクエスト」に参加してきました。この日のゲストは「オールリクエスト」では、3年ぶりの登場となる、日本廃品打楽器協会会長である山口ともさん。どんなリクエストが来ても、会場や曲の雰囲気を壊すことなく、自然な形で曲たちに表情を付けていく感性に脱帽しました。とくに、わたしの大好きな曲「冷たい水の中をきみと歩いていく」でトモさんが即興で作った水音は本当に心 が澄んでいくような感覚に。そのほか、「雨の国・雨の舟」「MOON GATE」「海の時間」でのともさんのパフォーマンスにもうっとりしてしまいました。

「オールリクエスト」でリクエストを選ぶのは、基本的には、座席抽選という方法。その他に、谷山さんが読み上げるいくつかの条件に最後まであてはまった人にリクエスト権が与えられる「~を探せ」というコーナでは、まさに仕込みなしならではサプライズシーンが展開され、会場を大きく沸かせました。谷山さんが最後まで条件があてはまった方にマイクを向けるとひと言「まずいな……」。何がまずいのかと思いきや、なんとコンサート会場スペース・ゼロの社長さんだったのです。そして観客一同拍手の渦。リクエストは会場にいるすべての観客に平等に与えられることが証明された瞬間でした。

この日、貴重だった曲はアンコールで歌われた木ノ内みどりさんへの提供曲「イマージュ」(作詞は松本隆さん)。オールリクエストはいろいろな緊張感の中で行われているので、見ている側は時間の感覚がなくなってしまう。同時に、今まで気づかなかった、谷山さんの楽曲の魅力を違う側面から知ることが出来る。見終わるとすぐに、来年もまたあの特別な空間に足を運びたいと思うのです。